エッセイ84-Essay84-2000.08
< 花遊び>
 今年もいつもに変わらず、この時期花々とたわむれ暮らしている。
  雪が消えるや野山はたちまち色とりどりの花に埋め尽くされて、わたしの季節がはじまる。福寿草、エンゴサク、ヒメイチゲ、ツマトリソウ、エゾカンゾウ、ヒオウギアヤメ、、、。コブシ、山桜、エゾムラサキツツジ、イソツツジ、ホウ、ツルアジサイ、ハシドイ、、、。 

 可憐、ゴウジャス、清楚、さまざまに形容される草や木の花に魅せられ、レンズをもって追い始めてから7,8年にもなろうか。ここ数年はデジタルカメラを使うようになり、画像が電子化された。いつか、紋別の草花を集めたCDを作りたいとの希望をもっている。

 深い山の中、周囲数キロの中にわたし一人。沢水の軽快なリズム。尾根を駆け抜ける風。小鳥の唄。草ぐさのそよぎ。息をこらして1センチ足らずの花を狙う。ファインダーをのぞき始めると、自分が熊のテリトリーに入り込んでいることすら忘れてしまう。
  花を追って暮らしていると、時の移ろいの速さが実感される。花たちは次々咲きいで去っていく。見逃すとあとの祭り。また来年を待つしかない。

 いま森は「万緑(ばんりょく)」という形容がぴったりの、したたるような深緑の時期にさしかかっているが、この緑の精気に包まれている私にはストレスが溜まらない。だから私の生き方は趣味におぼれているばかりではない

 大学生になって3回目の夏。今年も7月30日、夏季スクーリング受講のため東京に向かう。連日34,5度という猛暑の中での学習は還暦を迎えた者にとっては、なかなか厳しいものがある。汗の乾く間もなくて、最後は気力だけでしのぐ。その際、涼やかな森、小鳥のさえずり、清水のせせらぎ、花々の香りに包まれてすごした日々を想い描きながら耐え抜くのである。ふるさとの森は、遠くにあっても熱帯夜の寝不足からくるけだるい体を支えてくれるのだ。 

 今年も心身にたっぷり森の気を戴いて、がんばりぬくとしよう。

 


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