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エッセイ90-Essay90-2002.04
< 定 年> |
しだれ桜の咲き初めた京都嵐山から今年の旅は始まった。例年、生徒の春休み時期には塾も休みにして、子供達のストレス解消を図ると同時に私にとっても受験生を送り出した後の疲れを癒すため、フラリと旅に出る。 今年は、「紋別流氷あいすらんど共和国」のヘルパーとして京都から3年連続で参加している本島氏との約束で先ず彼の自宅へと向かった。「モト爺」と愛称されている彼は、10年以上も前に定年を迎え現在は文字通り、悠々自適に暮らしている。夏は自転車で道内各地を回り、春には四国、九州など南の方を回るという。今年のヘルパー期間中には請われて、紋別中学校において人生論を語るなど実に生き生きと毎日を過ごしている。 その後私の旅は奈良、大阪、東京方面へと進んだ。 東京では幼なじみが出迎えてくれ、高校時代のクラスメイト数人と鍋をかこんだ。 自分もそうだが40年ぶりに会う彼らは皆、頭頂や額のあたりに積み重ねた幾星霜が表れていた。 今年から来年にかけて私の同級生達が定年を迎える。彼らの中には体調がわるくて数か月時期を早めて退職した者や、他社に吸収され居づらくなって辞めた者などがいた。
彼らの中に、「故郷にもう身内はいないが、幼なじみが多くいるからしばしば里帰りするつもりだ」と語る者もあった。故郷は彼らを暖かく迎えてくれるに違いない。 「定年後」には様々な形はあろうが、モト爺の生気あふれる過ごし方には説得力がある。 竜安寺や大覚寺、高雄の高山寺など桜の名所に案内された。 「体の続く限り毎年紋別へ行きますよ。」あでやかな花の下で輝いていた彼の笑顔が忘れられない。
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