私の花畑はものすごくひろい。それは私の森やその周辺は当然だが、そこから八キロ先の峠の頂上まで続く道の両側も含まれているからだ。そこにも多種多様な花が季節と共に次々咲きでるのだ。なにしろ路肩は日当たりがいいので、草花は砂利などはものともせずに、生育場所をもとめて競い合う。
かつて、その道は途中の橋が落ちたりして、通りぬけは出来なかったが、ここ数年改良工事がおこなわれていた。そしてことし六月末に全工事がしゅうりょうした。
以来私は、専用道路をつくってもらった、と喜んで撮影に通い詰めていた。七月に入ると、背の高い夏草が道の両側からせりだして日に日に視界を悪くしていった。しかし私からみるなら、自然の手になるこの上ないすばらしい花畑が形成されていたのである。
七月中旬のある日、峠道に入りこんでおどろいた。草刈り用のおおきなバリカンをつけた作業車がすでに左側の花畑を根こそぎにしていた。「うえーっ、こんなのなしだよー。」思わず大声をはりあげたが後の祭り。
翌日には反対側もさっぱりと刈り上げられ、視界良好の状態になっていた。おそらく、道路の改良工事には、その後の保守、管理も含まれているのだろう。それにしても、釣り人か狩猟者、山林作業者がたまにしか入らないこんな山奥の道まで管理してくれるとは、お上とはなんと親切なものなのだ。
こんなことになるまでは、毎日の観察により、私はどこにどんな草花があり、つぼみの膨らみぐあいはどうだとか、すっかり記億していた。それなのに、あー。
本当は道路管理者のところに行って、文句のひとつもいいたいところだ。が、私以外の利用者にとっては、正面衝突の危険がなくなってさぞ安心だろう。それを思うと、つい「フリョッチ」のようにとがった口は、平らになってしまうのだ。
こんな時期に刈り取られると、今年はもう回復はしない。しかたがないので、その後はもっと奥地の林道にまで足をのばすことにした。
これから先は五、六月のように息つくひまも無いほどに、花が咲き次ぐことはないが、新顔の花と出会うために山詣でを続けるとしよう。
それにしても来年以降は、なにか方策を講じなくてはならないな。
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