エッセイ60-Essay60- 1997.11

<雪 虫>

 十月に入って二、三日もしたころ、ほっかり暖かい日なのに、森にはたくさんの雪虫が飛び交っていた。「おや、今年はやけに早いなー。いつもなら十月二十日すぎの筈だが。」彼らが飛ぶと、決まって三,四日後には急激に冷え込み初雪をみる。今年の秋は足早に来るに違いないと確信した。

 それからは、時期を逃してなるものかと、毎日紅葉の写真を撮り歩いた。日毎に発色はすすみ十月十日頃には最盛期を迎えた。インターネット用のいい写真が撮れ、画像処理をしてネット上にあげた。

 北国の住人は、いつものことながら冬へのそなえを怠ることはできない。私は塾という、季節にあまり左右されない仕事をしているが、冬タイヤの取り替えだとか古い家なので窓のビニール張り屋根の補修などと結構するべきことがある。

 今、森の中はすっかり葉も落ち、遠くの景色が透けてみえるようになった。分厚くしきつめられた茶色の絨毯をふみながら、私はあれこれ考える。

 春以来例年のごとく草花や鳥、虫などと遊び暮らしてきたが、気がつくと小さなログハウスが建っていた。高校もあと一回登校すれば面接時間もすべてクリアー、提出課題も残りは五枚。一月の期末テストを済ますと念願の卒業である。そして四月からは慶応大学哲学科に学ぼうと準備が始まっている。

 もしかしたら我が道にとって、今年は滅多にない大きな節目の年になっているのかもしれない。 日は昇り、日は沈みまた…。一見平凡な営みの中に人生模様は描かれ、いつしか大きく転換して行くのだろう。

 それにしても、雪虫は突如現れるまでどこにいて、あの狂いのない気象観測をやっているのだろうか。



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