平成二年秋、冬にそなえて足腰のトレーニングを始めていた。障害者の国際スキー大会に出場したいと思っていたからである。そのうちに左足の付け根が痛み出し、年末頃にはほとんど歩けなくなった。そこに至ってようやく、これはただごとではないぞ、と長期戦を覚悟した。その際、「家の中に病人がいるだけで、家人にとってはうっとおしいことだから、病を愚痴ったり痛みに文句を言わないようにしよう。」と密かに決めた。
その痛さは、焼け火箸を付けられ、あついっ、と逃げたいのに逃げられない状態、といった激烈なものであった。そんななかで、今日一日は愚痴るまい、今日一日だけはまわりに当たりちらすまい、とがんばりぬいて七年がすぎた。
通り抜けてみると、何故か、人生そのものに自信が付いていた。たいていのことに腹が立たなくなっていた。心に青春の勢いを得た私は、もうすぐ六十路を迎えるが、これから大学に進もうとしている。
この文章は一月二八日付け北海道新聞、全道版に掲載されたものです。