エッセイ75-Essay75-1993.03 <春です、嬉しいですね>
2月すえ、一夜、西よりの風が吹き荒れた。翌朝そとにでてみると、オホーツクにははるか水平線まで波頭がさわいでいた。 「あっ、流氷はすっかりおし流されてしまったんだ。」 ほおをかすめていく風も、こころなしか、まろやかに感じられた。 年々歳々くりかえされる季節の移ろいではあるが、春だけはいつもながらに浮き立つ心をおさえることはできない。明るい空、氷のない道など、開放感がたまらなくいい。
特にここ数年は4月、森の雪が融けるや、白樺樹液の採取をやっているせいで、一層まち遠しい。
「白樺樹液が白樺花粉症に効く。」 科学的に証拠立てられてはいないが私の体験がかたる。大量に飲んだ年は、症状が全くでない。量が少ないと軽い症状、と相関関係がはっきりしている。 「今年はあの樹から採るか。」まだ深い眠りのなかにある森のふちにたたずみ、採取する樹の選定を始めた。ストローを差し込むための小さな穴しかあけないが、樹に負担がかからないように配慮している。 花粉症に悩む知人からも頼まれているので、いつもよりやや多めに採るとしよう。それにしても去年のように、4月に急激に気温があがると採取中に腐敗がすすむ。今年はゆっくり暖かくなってもらいたいものだ。 道ばたで、ネコヤナギが芽吹いていた。ひと枝いただき持ち帰った。家のなかにも春がきた。
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