<森に感謝を>
1996年1月12日
ピシピシ肌を刺す北風が吹き抜けている。森は純白の冷たい衣に包まれて静かに眠っている。
私は安眠を妨げないよう、息をひそめて入り口にたち、雪融け直後から紅葉が終わるまでの、森の命達と戯れてすごした日々を、胸に暖かく思い返す。
次々咲きそめる花々、孵ったばかりのヒナ鳥、青大将、赤く熟れたグミと共々に大地の恵み、天の恵みの中で喜び暮らした。
特に夏以降は、唄い興じた。孫娘もドングリを拾いながら一緒に唄った。そのようなある日、森の生き物達と、心が通じあっていることにもきがついた。
あれはたしか、紅葉が始まった頃のことだった。
穏やかな木漏れ日の遊歩道で、私が、蘇った自分にであったのは。三十年以上にもわたって、精神の奥底に極度の疲労感があった。
ところが、ふときずくと、心は軽やかにスキップをふんでいた。あの重たいけだるさは、かきうせていた。
人生の途上で私をくたびれさせた様々な出来事は、もはや何らの影響を与えることはなくなっていた。
私は解放されていたのであった。
「オレはね、十分に経験をつんだハタチの青年なんだ。」 私は友人達に公言してはばからない。
すると「また、いつもの大言癖が始まったゾ。」彼らは呆れて、互いに顔を見合わせる。
しかしこれは決して冗談のつもりで言っているのではない。
我が心は、森に根をおろした、どこにいても森が見守ってくれている。
私はこの実感に支えられ、不思議な広がりの中で憩っている。
さあ、新しい年をむかえて、希望に満ちた歩みを始めるとしよう。