<雪解けはまだらに>
3月中旬から、雪解けを待ちかねてしばしば森の様子を見にでかけていた。
道はすっかり乾いていて、春が着実にちかずいていることを示していたが、そこいがいはズッシリ重い固雪に封じ込められていた。南側の屋根に雪はなかったが、北側には30cmほども積もっていて、家が懸命にささえていた。
もう少しかかりそうだな、私はつぶやきながら森を後にするのだった。
1週間にわたる本州旅行から帰宅した4月はじめ、ひそかな期待をもって森に出かけたが、杖をつく身ではまだ無理であった。
それでも雪解けはずいぶんすすんでいて、そう遠くないうちに念願がかなうと予想された。
4月中旬、ついにその日がやってきた。森の雪はまだらに解けて、そこをうまくたどって山小屋にとどりつき、さらに森の中に立つことができたのであった。
「おーい、みんな、久しぶりだったなー。寒さの中、がんばって、ご苦労さん。今年もまたよろしく頼むよ。」私は、冷たい風にさらされ、寒げに立っている樹木達にあいさつをした。
今年は白樺の樹液を採ることに決めていた。去年のうちからそのこと、白樺達に頼んでおいた。
「もう少し暖かくなって、おまえ達が活動を始めたときに、ビンを持ってくるからな。」
私はねらいをつけた白樺達に断りをいれて森をでた。
もう少しするとあの微かに甘い、滋養たっぷりの樹液を飲むことができる。考えただけでも心がおどる。それとハンの木も煎じて飲んでみようと思っている。
牛や馬が春になると決まって樹皮を食べるのだから、きっと胃腸によい何かが含まれているのだろう。
ぼつぼつ松の枝降ろしも始めるとしよう。
待ちに待った春になりけり。