Forest of OKHOTSK
エッセイ15-Essay15-   18.07.1996

<芽吹き>


 あれほど赤々と燃えていたカラ松林に、いつの間にか薄く緑色がさし始めた。
 そしてよく見るとあの赤みがすーっと消えていた。 
5月に入っても寒い日が続き、雪が舞うことさえあったが、季節は着実にへんかをみせている。
 森を歩いていると、子育て真っ盛りの小鳥達が、忙しげに頭上をとびまわる。草陰では、小型で薄紫のツボスミレが咲いている。ツツジも間もなく花開く。
 私は森での大仕事が済んだので、これからは次々咲き初める、草花の写真を撮ろうと考えている。 
息子と共同でようやく一眼レフを手に入れたので、いよいよ念願が叶う日を迎えた。今、説明書をくりかえし読みながら、傑作を撮りたいといきごんでいるのだ。
 森には、スミレだけでも五種類。画面いっぱいに接写しよう。ユキザサ、銀欄などが可憐な花の代表だ。彼らが、最も撮ってほしいと望む瞬間にシャッターを切ってやりたいのだが、私の腕で果たして、可能か。
 森に居ると次から次とやるべきテーマが与えられる。悩んでいる時間がない。ハラをたてる相手も居ない。歳をとっている暇がない。
 かくて私はいつでも生き生き若やいでいる。50年あまり生きてきて、今ようやく私も芽吹きの時を迎えた。
 白樺やハン、柳や桜の若芽達にむかって、俺もおまえらの仲間だから、よろしく頼む、などと声をかけている。
白樺の樹液が殆ど出なくなった。また来年だ。白樺達よ、ありがとう。


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