ここ3年のあいだに、数多く森を書いてきた。いつも、もうこれで森は書けないな、と思うのだが、すこし時間がたつと、また書いてしまっている。
これはどう言ったことなのだろう。相手は大自然である。とてつもなく懐が深いのだ。私は全身の感覚を開けはなって森に従う。自分を消して身をゆだねきると、森はその秘密のベールを少しずつあげてくれるのだろうと思う。
今はこう考えている。森ばかりえがいている画家がいる。自然のさまざまな領野ばかり追いかけている写真家がいる。それにならって自分も、今後も森を書き続けよう、と。
樹木、草、花、鳥、虫、獣、魚、菌類、太陽、星、空、風、山、川、雨、大地。私が森という言葉を使う際、いつもこれら自然の妙なる関わり合いを指している。
とても私がそのすべてを書ききれるものではない。しかし心を低くし、出来るだけ多く自然の息吹をいただいて、人の世にその香りを送り届けたいと願っている。
なぜなら、いつの世も、人間社会は健全な自然に抱かれてこそ、成り立つものと思うからである。
このエッセー集が世に出るについては、山市君はじめ、ソーゴー印刷様に、多大のご協力をいただいた。
また、私の稚拙な文章に目を通して下さり、暖かい御批評を寄せて下さった、多くの読者の励ましの上にこれらの作品は生まれた。
ここに皆様方に厚く御礼申し上げるしだいである。
著者 1996年6月12日