Forest of OKHOTSK
エッセイ23-Essay23-   01.08.1996

<カンゾウ食べた>


 今日は深い霧に覆われた寒い一日だった。息子がササ刈りに来てくれることになっていたので、十時過ぎ森にむかった。きのうのギンラン喪失のショックが残っていたが、どこかで又見つけようと決めていた。
 林床の草は思ったほど濡れていなかった。すぐに、眼を鋭くしながら探し始めた。道の右左のササの薄いところを特に念入りに視線でなめた。直射日光のあたらないところに生え出ると睨んでいた。そして、そしてみつけた。やはり一昨日あった近くで、ここに、あそこにという具合につごう八株。眼の前が一気に明るくなった。
 そんなにたくさんあるなら、どこにでもあるものではないのか、と言われそうだが、そうではない。三千坪のなかの二カ所、たったの八本だからやはり貴重種なのだ。そこいがいも探し回ったがなかった。
 上流の花園まで八キロほど足をのばして探したが、やはり未だみつからない。これから、もし持って行かれないとすれば、半月くらいは次々咲く純白の可憐な花を愛でることができる。ともかく目出度しめでたし。
 カンゾウは花や蕾を食べることが出来るという。いつも花を見る度たべたい、たべたいと思っていた。しかし、草の中に入っていくのが何となくおっくうで果たせないでいた。
 ところが今日上流に向かった際、とりやすいところで一株みつけた。 おまえを食べさせてもらうぞ。声をかけて、ぱっと開いている一輪を摘んだ。さくさくとレタスの歯触り、口の中でほんのり甘く、なるほど、なるほど、これならいける。ぼそぼそ言いながら飲み込んだ。これからは卑しい顔でこの花を眺めないで済むことになる。
 草の中に春の名残の花がわずか見えるが、ぼつぼつ夏の花が開き始めた。草たけ一メートルをこえる、オオカサモチやらウド、セリほか、あちこちで開花間近の蕾を見ることが出来る。
 今それぞれの場所を暗記しながら歩いている。これまで百五十枚ほどカメラに収めたが、どのアングルから捕らえるか、バックの光加減はどうなっていれば仕上がりがいいのか少し判り始めた。
多機能の高性能カメラだが、どの機能をどんな場合に使うべきかも見えだした。これから私に狙らわれる夏草は、ベストポーズを切り撮ってくれたと喜ぶだろう。
  午後から始めたササ刈りで、一気に公園が広くなった。まだ荒刈りの段階だが、これまで踏み込めなかった所へすたすた入っていける。森の眺めがすっかり変わってしまった。なれるまで違和感があるだろうが、やがてそれも消え、しっくりくるようになるはずだ。
 三年もすれば、現在の公園のように柔らかい草だけになって、一層珍しい花々が顔を見せてくれるだろう。私の目にはすでにその景色が見えている。待ちどおしいことよ。


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