Forest of OKHOTSK
エッセイ25-Essay25-   06.08.1996

<旅する朋へ>


 君はいま、どこらを歩いているのでしよう。大都会の雑踏の中にいるのですか、それとも峠道を息をはずませながら歩いているのでしょうか。 人混みのなかでは、肩がぶつかり足を踏まれ、またクルマの騒音や排気ガスでさぞ神経がくたびれることでしょうね。
 旅を続けるには路銀も必要です。どこかのオフィスで働いているのでしょうか、それとも農園でトラクターの座席に座っているのかもしれません。
 でも路銀を稼ぎ出すことに心奪われ、旅の途上にあることを忘れないで下さい。 旅は日常から離れて、気楽気ままではありますが、孤独感に襲われたり思わぬ災難にであうこともあります。 山道では蜂にさされたりヘビにかまれたり、都会では怖いお兄さんに難癖をつけられたり、盗難にあったり。また体が病んだりと心騒がすできごとが多いことですね。
 私もいろいろ困難に出会いました。スリと間違われたり、犬に追いかけられたり。どこの山だったか、熊にも遭遇し、口から泡をとばして逃げました。
 でも、それらの一つひとつがいい経験です。乗り越えるたびに知恵が付きます。そしてこれから旅に出る人たちに、いいアドバイスが出来るようになるでしょう。
持ち物も必要最低限にしぼっていらない物は捨てました。身軽がなによりです。ところで、私たちの旅はどこまで行けばいいのでしょうか。 私にもまだよく解りませんが、夜、大空に輝くあの天の川まで行くことになっているのではないかと思うことがあります。それならまだまだ旅は終わりません。
 私はいま、森の中に続く道を歩いています。道ばたには心慰めてくれる花々が咲いています。

        山路来て なにやらゆかし スミレ草

 この詩(ウタ)がつい口の端に浮かびます。森を吹き抜けてくる風は甘く、いかにも涼しいものです。木陰の切り株に腰を下ろして、ずっとずっとまえに家を出て、旅の空に身を置くようになってからの、数えきれない日々を思い返しています。君は南へ向かい、私は北へ向かいました。
 お互い歩き続けているならまたどこかで出会えるでしょう。なぜなら地球は丸いのですから。
   峠の登り口で出会った、赤いはんてんを着た見知らぬおばーさんから頂いたおにぎりを食べ、お腹もくちく、少し眠くなりました。一眠りしてから又歩くと致しましょう。この涼風の道を。


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