Forest of OKHOTSK
エッセイ37-Essay37- 18.01.1997

<花終わりて、また花来たり>

 五月から六月いっぱい、次からつぎへと小柄な花が黄、白、紫ととりどりに咲き継いだ。私は懸命にカメラをもって追いかけた。撮影がまにあわないほどの速さであったが何とか百五十枚ほどアルバムにおさめることができた。ところが七月はじめから中旬までは二十五枚撮りフィルム一本しか使わなかった。

春の花と夏の花の間に端境期があるのだ。その間、念入りにあちこちを探し回り、特に注視すべきチェックポイントを決め、連日根気よく蕾の膨らみ具合を調査していた。そしていよいよ時が来た。夏花の時節が。

 いま、道ばたには、黄色のタンポポモドキ、白いマーガレット、同じく白の数ミリの花が数千個も集まって房をなすオニシモツケ、小さな花が集まり傘のように拡がるオトコエシなどが我がもの顔に咲き誇っている。
 その他名だけあげれば、オトギリソウ、ヒメジオン、ノハナノショウブ、ハマナス、ノコギリソウ、アキカラマツ、エゾアザミ、チシママンテマ、カワラマツバ、カタバミ、ミヤマキンポウゲ、オオダイコンソウなどなど、書ききれないほどたくさん咲いている。

 二十日土曜日、素晴らしい発見があった。あちこちの草むらを例の如く観察していた際、二メートル程にも延び盛る夏草に混じって、何か白っぽいものをみつけた。葉の裏側が見えているのか、もしくは花なのかじっと瞳をこらすと、どうやら花のようだ。いい角度を見つけてそこから見ると、それは豪華絢爛たるオオウバユリではないか。まさかこんな身近にその花があったとは。
 すっかり有頂天になってしまった。翌二十一日、兄弟達が集まり、奈良県から里帰りしている姪の歓送会をする事になっていたので、その時草を刈って貰って撮影しようと考えた。

 二十一日、一足先に山に向かった私は、みんなの到着を待ちきれず、刃渡り四十センチで鍬のような長い柄のついたカマを引きずりながらそこへちかずいた。ぼうぼうの草藪をどのように切り開くか胸に設計図を描き作業にかかった。

ヘビが潜んでいるかもしれない、蜂が巣ずくりをしているかもしれない。でも私に恐怖はなかった。ただユリにちかずき、撮影したい、その一心で重たいカマを右手だけで操作した。水をかぶったように汗が噴き出した。手が痛くなり何度も手首を振ったが、決してやめようとは思わなかった。

 苦闘二十分あまり、ついに目指す獲物を草むらに作った空き地に呼び込んだ。草丈一メートル六十センチ、茎の径六センチ、花の色、うっすら緑がかった白、ながさ十三センチ、花の数十九個といった、これぞ夏花の女王と呼ぶにふさわしい堂々たるものであった。葉の大きさはやや小振りのウチワほどであった。

 近ずいたり遠ざかったり、さまざまなアングルから撮影した。これは是非ともインターネットのホームページに上げよう、などと考えていた。まだ近くの草むらには五本あったが、そこはそのままのこし、人目にさらされるようになった二本はかりとった。

 いま山小屋の玄関前に飾られている。そして今日二十三日、北海道新聞の取材があり、私のスナップ写真を撮る際、横におかれた。これをはずみに、今後も大発見をめざして、森をうろつこう。あー満足、満足。


ご意見・ご感想をお寄せください。mail :ny-kaba@js2.so-net.ne.jp メール