今更高校卒業資格なんぞ……。
三十年あまりの歳月の中で幾度繰り返したことだろう。しかし今回私は、今更ながら……やってみよう、という気になった。
昭和三十五年(1960)九月、子供の頃に治まった胸腰椎カリエスが再発し、大学受験をひかえた大切な時期に、入院という状況に追い込まれた。その後さまざまな理由も重なり結局退学した。
二月はじめ、通信制の有朋高校が生徒募集をしていること、新聞で知った。なぜか、心に退学の際の、苦く切ない想いが鮮やかによみがえってきた。
「ようし、この際がんばって高校を卒業しよう。その後大学にも入ってみるか。まだまだ頭の働きだって鈍ってはいないし、学問をする意欲も衰えてはいないぞ。」
協力校である紋別北高校で担当の先生から説明を受け、すでに編入学の願書を提出した。あとは三月末の面接を待つばかりである。
私の場合、必須八十単位のうちあと五分の一を取れば卒業できる。そんなに難しいことではない。
長いこと塾で教えてきたが、久々に、教わる側にまわるわけで、すっかり忘れていた生徒の気持ちを思い出すだろう。今後の指導に生かせるにちがいない。子供たちが、五十を越えてまだ学ぼうとする私の姿勢から何かを感じてくれればありがたい。
人生死ぬまで勉強。この言葉を地でいくことになる。森で、草木や虫たちから様々教わり、インターネットを通し広く世界から学んでいるが、一人の人間が学べることはわずかだ。しかし私は常々、そのたかが知れた極限まで歩んでみたいと思っている。